LEDレーザー彫刻機のワット数って何?
CNC3018Proのレーザー付きを買ったつもりが、レーザー無しになってしまい、このCNCの稼働部分をレーザーに交換する手間が面倒そうだな。という理由で、レーザー加工は別の機械にしたほうが良さそう。と、新たにレーザー彫刻機を買いました。彫刻には興味なくて、カットしたかったからワット数は最大の20Wを選んだのだけど、なぜか非力。これはどうして? というお話しです。
目次
入手可能な最大20ワット
これまでレーザーカッターといえば、二酸化炭素レーザーで20Wクラスのものが20数万円するというのが常識でしたが、最近は、LEDレーザーで20Wだ!という商品も出てきています。
むかし、友人の工房で、水中ロボットのカメラ窓に使う、2mm厚のアクリル版を切ってもらったことがありました。さすがCO2レーザー。透明でも楽勝に切れます。だから、LEDでも20Wあれば、けっこう行けるんじゃないかと期待してました。
ebayでCNC購入のやり取りで懲りたので、もうちょっと普通のお店っぽい対応が期待できそうなAliExpressで物色。すると、本体18,641円+送料2,795円、合計21,436円、LEDレーザー20Wのこんなレーザー彫刻機を見つけました。
ボデイが小さい割にワークエリアは330x220mmと広く、高さもないので片付けるのも簡単そう。早速注文。さすが送料を別に払っているだけあって、12月3日に注文して、12月8日には配達されました。早いな。
組み立て
構造が簡単なので、ほとんど組み立てるところはなく、2つのレールをT型に組み合わせ、レーザーを取り付けるだけ。ステッピングモーターや基板などは最初から組み付けられていました。ただ、レーザーを固定するネジの長さが合わない。
初彫刻
付属のデータにいろんなデザインが用意されていたので、付いてきた板に彫刻してみます。結構きれいな刻印が簡単にできてしまいました。
こうなってくると、次に試したいのは表札。MDFじゃ屋外に飾るわけにはいかないけど、とりあえず、どんな手順で自分のデザインが作れるかやってみる。これもキレイに刻印されて、もうこの手のものは楽勝。
精度も相当なもので、かなり細かいところまでいけます。このロゴマークのヒゲのところとか判別できるし。ただ、それなりにレーザーパワーは調整がいりますけど。
問題は排気
レーザーで問題なのは、焼けて立ち上る煙。小さいものならすぐ終わるので気になりませんが、大きくなってくると時間も掛かるし、けっこう煙が出てくる。友人のレーザーカッターは排気ダクトがあり、外に排気されてた。この装置は簡単な構造だし囲いもない。なので、台所の換気扇の下に持っていって、ここで作業することにします。これなら煙がでても安心。それでも部屋のなかには匂いが充満しますが。
レーザーで切る
彫刻は完璧にできることは判ったので、本来やってみたかったレーザーで部品を切り出すのを試してみます。お土産に買ってきた厚紙から切り出した部品を組み立る恐竜モデル。たぶん高精度なレーザーカッターで切っているのですが、これと同じことができるか試してみます。コピー用紙なら楽勝で切れます。厚さ1mmぐらいの厚紙。切れるのですが、細かいところが焦げてしまい組み立てに耐えません。もっと出力が高いレーザーで短時間にスパッと切らないと、ゆっくりでは焦げてしまいます。でも、ゆっくり移動させないと厚紙は焼ききれないジレンマ。
友人から、「こういうのはレーザーパワー絞って、何回もなぞって切るのだよ」とアドバイスをもらい、3mm厚のMDFに対していろんなパラメータでやってはみたんですが、切り出せるまで頑張ると、どうしても焦げが強くなって、おもったほどキレイには切れません。20W レーザーってこんなものなのか?
20Wって本当?
友人の20Wだか40WだかのCO2レーザーはアクリルが切れたので、この20WのLEDレーザーも、少しだけ期待してたのだけど、ぜんぜん無理。本当にこれ20Wなのか? レーザー本体の側面に書いてある小さい時を読んでみると、Class 3Bとある。ネットでClass 3Bを調べると、それはレーザーパワーで最高0.5Wということになっている。これは変だ。AliExpressの売り手に問い合わせてみることにした。
私「これは本当に20W? 本体にClass 3Bと書いてあるけど、それはMax0.5Wってことだよね? とてもカットが悪いんだけど、とても20Wだと思えない」
売「ハーイ、それは20Wだよ」
うーん、納得がいかない。これで20Wだと? Class 3Bだぞ? これじゃ彫刻ぐらいしか役に立たないではないか。バカバカしくなったので、しばらく放置。細かい線は無理だけど、切るならCNCで切ったほうが焦げないし。
新しいレーザーモジュールを買う
レーザーモジュールだけ、別に買って比べてみることにした。次に買ったのはこれ。端子のピン数が4ピンで、今のやつは3ピン。温度端子が増えてるけど、なんとかなるだろ。
パワーは4種類から選べることになっている。パワーが大きくなるにつれ、本体の長さが長くなる傾向があるようだ。もちろん買うのは20W。送料無料で11,424円。2020年1月29日に注文して、2月9日に配達された。まだ、この頃は新型コロナウイルスの影響は少ない。10日もあれば中国から品物が届く。
2つのレーザーモジュール比較
2つのレーザーモジュールを比較してみる。上は最初からレーザー彫刻機に付いてきた20W。下は新たに買った20W。写真でみたときもっと大きいかと思ったのに、実際は大して変わらないというか、細身になった。
構造に違いがあり、上のは冷やすためのフィンが外についていて、ファンが乗っかって風を当ててる。下のは本体内に風のとおり道があり、ファンから風を流して冷やしてる。レンズ部分はネジでピント調整ができるのだけど、どちらも同じ直径で交換することができた。みんな、この辺の重要部品は一緒なんだな。
この2つのモジュールのコネクタ。上は3ピン、下は4ピン、そのまま交換することは出来ないので、変換ケーブルを作ってみる。コネクタにはいろんな規格があって、端子の間隔が微妙に違うから大変。同じ色の配線を繋げばいいわけではないらしく、さんざん迷った結果。レーザーモジュールの基板に刻印されていた表示を信じて結線。良かった、間違っていたら壊れるところ。
新しい20Wの威力
さあ、レーザーモジュールの交換も終わったので、どれぐらい切れるのか試してみます。6mm厚のMDFボードが切れたら満足なんだけど、果たして? レーザーパワーを変えたり、なぞる回数を変えたり、いろいろ試しました。が! 正直、最初のモジュールと大して変わりありません。
6mm厚ともなると、50回ぐらいなぞってみないとレーザーが底まで貫通しません。そして幾ら回数を増やしても、レーザーの絞りが1点に集まるのは、ある深さなので、6mmの厚さを均一に通過することができない。それにレーザー光は広がると平らな形をしていて、レーザーを動かす方向により、細くなったり太くなったりする。だから、当たるパワーが一定にならず、切れたところと切れないところがまだら模様。これで切れただろうと、部品を抜いてみるけど、切れてないところがあるから抜けない。これは無理だわ。20Wなんてウソ。
20Wの怪
レーザーに関する情報を集めているうちに、売り手がいう20Wの意味がだんだん判ってきました。これは入力が20Wであって、レーザー光の出力が20Wではないのではないか。彼らのいう20Wとは入力電力のこと。出力はせいぜい5W。そう考えると納得がいきます。そもそも出力が20Wもあったら、こんな簡単に買えていいのか? という疑問も湧きます。 Class 3Bならありえる。
AliExpressでいろんなレーザーモジュールを探していると、こんな表記も見られます。これ、明らかに入力が20W。
グラフから100%出力のときでも、計算すると2Wにしかならない。
まとめ
レーザーモジュール2つになって、やっと20Wの意味を理解したわけですが、大したものは切れません。刻印ならできます。けど、木に刻印するなら20Wも要らない。Maxでやったら焦げるし。かと言って厚みのある板が切れるわけでもない。それが20WのLEDレーザーモジュールです。