テスラ モデル3の◯✗△
およそ半年1万キロを走ってみて、これまで4台のメルセデスやBMWを乗り継いできた感覚と比べて、正直なところどうなのかを思いつくままに挙げてみようと思います。
目次
車重 ◯
これまで乗ってきたクルマはすべてカブリオレだったので、同じ車種のセダンに比べて100-150kg程度車重が重かった。EVは車重が重いといいますが、最後に乗っていたE350カブリオレは1790kg、モデル3は1840kgなので、その差50kg増。ぜんぜん重さは感じません。それに前後の軸重のバランスがいい。なんと前後とも920kgで50:50のバランス。これはすごいことなんです。BMWは特に50:50を目指して設計してますが、これはタイヤが滑ったときの姿勢が安定します。自然と雪道にも強くなる。
ハンドリング ◯
モデル3を試乗して速攻で購入を決めたのも、運転してみると分かる鼻先の軽さ。大抵のエンジン車はフロントに重いエンジンを積んでいて回転モーメントが大きいから、ハンドルを切ったときにすぐに曲がらない。モデル3はフランクと呼ばれる小さいトランクがボンネットの下にあるぐらいフロントが軽い。それでいて50:50の軸重ということはリアの重さも中心に寄っているはず。ポルシェが目指している設計に近いと思う。よって回転モーメントが小さいのでハンドルを切るとすぐに曲がる。峠のくねくね道を走っていても楽ちんで楽しい。ただメルセデスからの乗り換えだと高速道路で小指1本分動かすだけで車線変更できるぐらい敏感だから長距離運転では疲れ気味かも。高速ではオートパイロットで旅したほうがいいかも。
回転半径 ✗
モデル3の最小回転半径は5.6mで大きいです。これが扱いにくい。これまでのメルセデスは特に最小回転半径が小さくCLK320は4.9mとコンパクトカー並に小回りが効いた。なのでモデル3の駐車に慣れるのに時間が掛かりました。思ったカーブで入っていかない。ハンドルを最大に切ったときの前輪のはみ出しが明らかにメルセデスより小さい。アメリカは道も駐車場も広いので、この回転半径で問題ないのでしょう。
キャスター角 ✗
クルマの前輪の回転軸は垂直でなく後ろに少し傾いてます。これをキャスター角といいますが、モデル3はおそらく標準的な角度。メルセデスはかなり角度がついていて、ハンドルを最大に切るとはっきりしますが、タイヤが切った方向に傾きます。このキャスター角の違いが切ったハンドルがセンターに戻ってくる力に影響して、モデル3はハンドルの戻りが悪いです。高速道路を走行中にちょっとだけハンドルを切ったときモデル3はそのまま切った方向に走ろうとするし、メルセデスはまっすぐに走ろうとセンターに戻ってきます。この少しの差が長距離運転するときの疲れに関係してきてモデル3のほうが疲れます。キャスター角を大きくすると直進安定性が増しますがハンドリングが鈍くなるので、設計で何を目指すかですが、高速走行の長距離はメルセデスのほうが疲れません。
オートパイロット △
名前から自動運転を想像しますが、車線内を指定速度で走り、前と車間距離が詰まったら減速してキープする機能で普通にオートクルーズです。ただ車線を認識する能力は優れていて東名高速下りの大井松田先の右ルートのカーブでも問題なく曲がっていきます。300R で80-100km/hでも問題なしです。ただ厳密に車線の真ん中をキープしようと微調整しているので、もう少しやんわりと制御してくれないかなぁと感じます。また、3車線の真ん中を走っているとき、左車線に大型トラックが走っていて、それを追い越していくシーンでは、少し右側に避けて走り追い抜くと真ん中に戻ってきます。ちょっと急激な挙動ですけど人が運転するのに近いです。この辺はもう少し仕上がりを良くしてほしいところ。
オートパイロットで気に入らないのは、ハンドルから手を離していると15秒間隔で「すこしハンドルをまわしてください」と警告してきます。直線道路ではハンドルを握っていても離していると判定されるので、左右どちらかにちょっとだけ力を掛け続けないと警告されるのが面倒。最近のUpdateではカメラでハンドルを見てるので握っているフリでも大丈夫になりました。あと中央のディスプレイを長く覗き込んでいると「道路を見てください」と注意されます。車内カメラで顔の向きも監視されます。高速では前を向いているなら手放しOKにしてほしいところです。
オートワイパー ✗
モデル3はレインセンサーを積んでいなくすべてカメラで判断してます。雨が降ってフロントガラスが濡れるのもカメラでやっているので、これが全然だめ。AUTOにしておくと昼間でもワイパーを動かすときがあるし、割と雨が降ってるのになかなかワイパーが動いてくれなかったり。ずっと前からテスラオーナーはみんな不満に思ってますが、アップデートでもなかなか改善されません。そんなに難しいのかな。
ウィンカーレバー ✗
ハンドル周りにレバーが1本もありません。ウィンカーはハンドルについたボタン操作です。これが一番厄介でハンドルを回している最中にウィンカー操作をするのが苦難です。安全のためにもウィンカーだけはレバーを残していてほしかった。DドライブやRリバースの切り替えも画面でタッチですが慣れれば問題なくなりました。
加速 ◯
加速力は素晴らしいです。電気自動車全般に言えることですが、モーターのトルクはすごいです。モデル3AWDの0-100km/hは4.4秒。実際にこれが役立つシーンはあまりありません。本当にすごいのはこの加速力というより反応の速さです。アクセルを踏んだ途端に加速するので、運転していて、この瞬間!というタイミングで遅れなく流れに乗ったり間に入ったりできます。運転がうまくなった気分になります。しかし、これがいけないんでしょうねぇ。ちょっと余裕がないシーンでもいけちゃうんじゃないかとアクセルを踏んでしまうので事故が起こりやすそうな気がします。自分は加速力を穏やかにするコンフォートモードで使っています。
モデル3は変速機がなく1速です。エンジン車はクラッチやトルクコンバーターの滑る部品があり、変速機もあるので、モーター駆動のダイレクト感は味わえません。つなぎ目のない強力な加速は気持ち良いです。
エアコン △
エアコンの送風口がありません。画面で向きを変えるとスリットの奥で羽が動いて風向が変わります。オートに設定して使っていますが送風音が大きいです。せっかくEVで静かなのに送風音がうるさいのはもったいない。なので風力はLOWで使っています。
これまでのカブリオレより窓ガラス面積が大きいせいか暑いです。天井のガラスルーフは不要なのでサンシェードで覆っています。空が見えるのに憧れるのでしょうが、オープンカーに乗っていた人にとっては無駄です、暑いだけです。総合するとエアコンの効き方はイマイチです。冷えないというより室内の温度が均一でなく人間だけを冷やしたり温めたりしようとしてます。これまでついてなかったシートクーラーがあるので、暑さに対してはまだマシですが。ハンドルにヒーターがついているのも寒い日には役立ちました。
遮音性 ◯
窓などガラスは合わせガラスで遮音性がいいです。ドアを開けてガラスの断面を見ると2枚の薄いガラスで樹脂を挟んでいるように見えます。あまりに遮音性がいいのでタイヤハウスから入ってくるロードノイズが一番気になります。純正で履いているタイヤはミシュランのe PrimacyでEV向けに作ったタイヤでロードノイズも抑え気味のはずですが、やはり荒れた路面でのザーッという音は気になります。
ゆっくり走っているとき安全のために車外に音を鳴らしえいますが、真夏の暑さでしばらく窓全開で走るまで音を出しているのに気が付きませんでした。
ナビゲーション ◯
まるでGoogle Mapのようなナビ画面で日本製の優秀なナビのような親切さはありません。最近のアップデートまで高速道路の次のSA・PAまでの案内も出ませんでした。今は出ますが2つ先までのSA・PAの名前と距離が出るだけです。月に990円払ってプレミアムコネクティビティをサブスクすると道路上に混雑状況が黄色や赤色で出ますが、Google Mapと同じ情報のようで都会ではほぼ色づいてあまり役立ちません。本当に渋滞しているところだけ表示してくれたらいいのに。
プレミアムコネクティビティをサブスクしなくてもルート案内と到着時間は正確です。選択するルートはGoogle Mapと同じで混雑状況を加味した結果です。つまりこのナビはGoogle Mapをカスタマイズしたものです。そのためスマホのGoogle Mapで行き先を探して共有ボタンを押すと、Teslaマークが選択肢に出て、行き先をクルマにセットできるのがとても便利です。知らない土地や旅行に出かけるとき、あらかじめGoogle Mapで調べて★をつけておいて、目的地についたら次の行き先をスマホのGoogle Mapから共有でクルマに送っておくだけですぐに出発できます。ハンドルに音声認識のボタンがあり、この認識精度もかなりのもので、おそらくGoogleを使っていると思います。
タイヤの減り △
EVはタイヤの減りが早いという噂ですが、それは車重のためではないと思います。車重はこれまでのカブリオレとほぼ同じで、タイヤの減り方もほとんど変わりません。おそらく4万キロぐらいはもつとおもいます。減る原因はエンジン車よりトルクが高いためです。加速が楽しいからアクセルを踏むのと、回生ブレーキが強いので停止するときタイヤへの負担が大きいのだと思います。回生ブレーキが強いと滑らかに停止するのが難しいく急激に減速しがちです。やんわりとアクセルOFFにしていかないと、エンジン車のようにスムーズに停止できません。人間は力を入れていくのは調整しやすく、徐々に力を抜いていくのは難しいのです。
ワンペダルドライブ ◯
モデル3を初めて運転したとき、アクセルOFFで急減速するのにビックリしました。それでも1日運転しているうちに慣れてきて、ブレーキを踏むことなく運転できるのはとても楽だと思うようになりました。事実、車庫を出発して帰ってくるまでブレーキを踏まないことは普通です。車庫入れの切り返しで前後するときぐらいしかブレーキを踏みません。走行中にブレーキを踏むのは予測できない状況になったとき。例えば前のクルマが急停車したとか、横から自転車が飛び出してきたとか。
ワンペダルドライブはアクセルOFFですぐに回生ブレーキが効き始めるので、緊急時の停止距離も短いです。エンジン車ならアクセルOFFではすぐに減速せずブレーキへ踏み換える短時間の間は空走してます。ほんの0.2秒ほどの差ですがブレーキが効いているのと効いていないのの差が停止距離の差になります。ブレーキとアクセルの踏み間違いで事故が頻繁に起きていますが、ワンペダルドライブではこの頻度が減るのではないかと思います。