詐欺18650バッテリーを分解
18650という型のバッテリーがあります。メジャーではありませんが、充電できる機械に内蔵されていることが多く、うちでも防犯カメラの内蔵電池として使っています。ある日、中国のAliExpressで容量が9800mAhと歌う18650バッテリーを見つけました。1本150円ほどでめちゃ安です。送料がDHLで218円、どうせなので20本まとめて3270円で買いました。まあ9800mAhもあるはずないので、2000mAhぐらいあれば十分です。ところが・・・
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届いたけど異様に軽い
注文から12日間ほどで届きました。バッテリーって空輸できるんでしょうか。宅急便では断られますが。そして持ってみて「軽っ!」とすぐに異様なのに気づきます。今までも18650バッテリーは使っていたので、手に持った感触は分かっているのですが、異常に軽いのです。重さを量ってみましょう。
届いたのは24グラムで、いままで使っていたのは43グラムです。これだけ違うと持った瞬間わかりますよね。
バッテリー容量を測ってみる
さあ、9800mAhは期待してないけど、どれぐらい容量があるんでしょう。計測方法を考えます。18650バッテリーを一度に4本充電できるモバイルケースがあるので、1本だけセットして、USB電流電圧テスターを繋ぎながら、放電してから充電してみます。
なんと、100%充電完了になるまで、テスターが示した値は428mAh。このテスターが消費する電力や、モバイルバッテリーケース内の回路が消費する電力を考慮すると、バッテリー容量は更に低いはずですから、500mAhは無いはずです。これはひどい数値ですねぇ。
店に返金を求める
どおりで軽いはずです。中身が詰まってないんですね。早速この結果を添付してAliExpressの店に返金を求めてみました。もちろん全額の3270円です。なかなか返事が帰ってこないのですが、ようやく来た返事はこれです。
おいおい、500mAh以上の容量は無いことは明らかなのに、18650のテスターで測れだと? そんなものわざわざ買うわけにもいかないので、もっと正確に測ってあげましょう。
IMAX B6で充放電してみる
ラジコンで使うリポバッテリーやいろんな種類のバッテリーが安全確実に充放電できるIMAX B6を使って測ってみます。このバッテリーのフィルムには充電時は最大4.2V、放電時は最低2.75Vでカットオフすると書いてあります。仕様には充放電保護回路が入っていると言ってますけど。IMAX B6は放電電圧が3.0V以下にはできません。まずは電流0.5Aで3.0Vになるまで放電します。そして、そこから0.5Aで充電完了するまで待ちます。
115分48秒かかって382mAh入りました。USBテスターでは428mAhだったので、そんなものでしょう。つぎはここから0.5Aで3.0Vになるまで放電してみます。
46分08秒かかって放電完了です。数値は384mAhなので充電とほぼ同じ値です。これがこのバッテリーの容量と断定して間違いなさそうです。おいおい9800mAhはどこへいったんだ?(笑)
分解への準備
こんなに大胆に詐欺られると中身を確認しないといけませんよね。きっとびっくりの何かがあるはずです。バッテリーを倒すとカラン!という乾いた中身が詰まっていない音がするので、こんな構造になっているのではと想像します。小さいリポバッテリーが入っているとか、容量の小さいバッテリーが入っているとか。
まず、分解する前に完全に放電させてしまわないと爆発するかもしれません。IMAX B6で放電させたあと、さらに抵抗を繋いで完全に放電させます。ちょうどスチロールカッターのニクロム線が2.5Ωだったので、これを繋いで電気を消費させます。このとき端子間の電圧は0.265Vなので106mAの電流が流れているはずです。30分もしないうちに、電圧は100mV未満になったので、もうエネルギーは溜まっていないでしょう。それより2.75Vで過放電を防ぐ回路はどうなったんだろう? そんな回路入っていないのでは?
分解してみる
ここからが結構たいへんです。バッテリーを覆っている筒の金属は割と硬いのでカッターなどでは切れません。プラス側は筒とプラス電極がフィルム1枚で隔てて噛ませてあるので、マイナス側からアプローチしてみます。ポンチで側面にくぼみを作り、潤滑油クレ556を垂らしてドリルで穴あけ。そこからペンチで周囲を1周、剥ぎ取ります。コンビーフ缶詰を開ける要領です。
中身がスカスカ
マイナス極の底を開けることができました。中にフィルムの巻物が見えます。巻物の端には電極があり、これが底にくっついていました。
巻物を取り出してみます。バームクーヘンのように巻いてあり、中心が大きな空洞になっています。ぜんぜん詰まっていません。軽いはずです。
バームクーヘンを広げてみます。白いフィルム、黒いフィルム、白いフィルム、黒いフィルムの4層でできていて、2つの黒いフィルムには電極がついていて、それぞれプラス、マイナスになっています。少し湿っていますが電解質みたいなものでしょうか。接着剤のような匂いがします。
バームクーヘンには保護回路が見当たらないので、あるとすれば外側の筒の中です。でも、なにもありませんでした。プラス極側に挟まっている様子もありません。ですよね、2.75Vで過放電を防ぐ動作はありませんでしたから。
というわけで、分解完了しました。黒いフィルムはベースがアルミ箔と銅箔のようで、黒い黒鉛のようなものが塗ってあります。白いフィルムはセパレーターみたいです。湿っているのは有機溶剤。だからリチウムイオン電池って発火するとよく燃えるのでは?
詐欺バッテリーを売っている店情報
9800mAhなんてあり得ないとは思いましたが、まさかここまで酷いとは思いませんでした。2000mAぐらいあれば許したのに、完全に詐欺のために作られたものです。これを売っていたお店は、Aliexpressの「Daweikala Battery-a Store」という店です。他の店でも同じバッテリーを売ってますから、面白半分で買うのはいいですが、まったくデタラメな容量なのでご注意ください。また分解は危険ですから自己責任で。
まともな18650は
ちなみに、1年間、防犯カメラに入れて、毎日ソーラーパネルで充放電されていたヘタった18650をIMAX B6で充電してみると、公称値は2000mAhのところ、1677mAhの容量が残っている。容量は83%まで落ちたけど、まだ使えます。詐欺バッテリーとは大違い。
更に酷い詐欺バッテリー
AliExpressで18659で検索すると、さらに酷い詐欺容量のバッテリーはたくさん出てきます。これなんか外側のフィルムデザインがそっくりですが、9800の前に1を書き足してある19800mAhあるというバッテリー。もうめちゃくちゃ(笑)